【13】鳥羽シーサイドホテル 常務取締役 大女将 田中花恩里さん

社員を守るのも女将の責任
しっかりと教育し、満足度をあげていきたい


社員を厳しく指導し、また社員を守るのも田中女将の仕事。一人一人の個性が、鳥羽シーサイドホテルに受け継がれるサービスとなるよう、社員と接しています。

社員には失敗を恐れず、お客様が喜ばれると思うことには、いろいろとチャレンジさせています。失敗は繰り返さなければいいんです。トップダウンで指示することは簡単ですが、自らの気持ちで動いてくれるような教育に努めています。そんな人材を増やしていきたいですね。礼儀作法、ふるまいについてのマナーなどはもちろんですが、上下関係が厳しかった時代と違って、「はい」でなく「うん」と返事する若い世代の子もいますし、先輩への言葉遣いなど、気になることは、わたくしが注意するようにしています。そういった普段の素行が、お客様の前で出るといけませんからね。生活も変わってきていますので、上座や下座、床の間などを知らなかったり、新入社員には雑巾の絞り方から教えたこともあります。怖い存在だと思いますが、「鉄は熱いうちに打て」です。言えば習得してくれます。今、わたしの第一の使命は、次の女将を育てること。

我が社には「品質向上委員会」があり、お客様の声を元に、評価がよくなかったことにはすぐに対応しています。ただ、よくなることであれば直ちに実践したいのですが、組織ですから、ことによっては自分の考えだけでは通せないところもあります。それが世襲制で女将さんを受け継ぐ方と違うところではないでしょうか。経営者と従業員との間で悩むこともあります。社員にいやなことも言わなければならないときもあります。それでもいつも社員のことを思って発言しています。

先日、あるお客様から、サービスについたスタッフの粗相にご立腹で、そのスタッフを辞めさせないと気持ちがおさまらないとの電話を受けました。誠心誠意お詫びすると同時に、「わたくしは社員を守る立場ですので、それにはお応えできません。今後しっかりと社員教育していきますので、またお越しいただけないでしょうか」とお伝えしました。その想いが通じたのでしょうか、再びそのお客様が訪ねて来てくれたのです。アンケートにも、お褒めの言葉をいただきました。辞めさせることはできないというのは、わたくしの本音でしたし、お客様にご理解いただけたことがうれしかった。心底やっててよかった、と思いました。

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【12】鳥羽シーサイドホテル 調理部長 統括料理長 都地宏二さん

何日も前から仕込んで、料理は簡単にできない
それでも食するのは、ほんの一瞬
それをいかに真剣に取り組むかどうか


鳥羽シーサイドホテルは3つの館があり、厨房では和食・洋食合わせて46人が働く大所帯。味覚だけでなく調理する音や香りなど五感で楽しませてくれるバイキングや、和洋折衷の会席料理など、多彩な料理を取り仕切るのが統括料理長を務める都地宏二さん。鳥羽生まれの鳥羽育ちで、共働きの両親のもと、小さい頃から台所に立っていたそうです。

料理は目で食べるとも言われています。見て美しく、食べておいしい色彩は、味覚さえ左右します。また日本料理では、春夏秋冬と四季を折り込んだ食材を使って演出します。わたしはきれいな料理をつくって、お客様に喜んでいただき、また驚いていただくことが好きですね。

ホテルは、いろいろなお客様にお越しいただきます。関西、関東、また外国から、そして甘口な人、辛口な人、また激辛を好む方もいて、それぞれ五味五感を持っています。みなさまに喜んでいただき、アンケート調査で高得点を取るのはなかなか難しいこと。まずは平均点で75点、100人宿泊されて70人ぐらいのお客様がおいしいと言っていただければ100点ではないでしょうか。しかし、より100点に近付けるよう、一生懸命努力することが大切だと思っております。

お客様の中には、料理の献立を見ていない方がたくさんいます。さまざまな食材を使って、一つの料理をつくり出すには、2、3日前から仕込みをし、とても時間が掛かり、簡単にできるものではありません。しかしお客様が食されるのは、ほんの一瞬。また、よそ見をして料理を口に入れている方、お酒の席ではすぐに食べられず冷めてしまったり、酔っていて味わうどころじゃなかったり、食べられないときもあります。それでも影穴からタイミングを見て、揚げたり、煮たり、蒸したり、切ったりと料理長として指示を出しています。

白鳥はとてもきれいで、優雅に泳いでいます。ですが、水面下では必死にこぎ続けて、自分を表現しています。勝手な持論ですが、わたしの職業は白鳥と同じ。水面下のような裏方ですが、どんなに辛くとも、真剣に料理に向き合い、いかに漕ぎ続けて、きれいで優雅な料理を見せられるかだと思っております。それが一瞬で終わってしまっても、真剣に取り組むことが、料理人の「粋」だと思っています。

統括料理長となったのは48歳でした。私自身出来が悪く、褒めていただいたことはあまりありませんでしたし、よく叱られました。でもくじけませんでしたね。「叱られる」ことは、技術を教えていただくこと。イコール「財産」です。料理人は技術が財産。その財産を諸先輩から譲り受けているようなものです。料理長といっても大変です。パワハラ、セクハラ、労務管理と、わたしの若いときにはこれらの言葉すら知りませんでした。若い人に指示を出したことが気になり、家の前まで帰っても、会社に戻ることも多々あります。諸先輩からいただいた技術という財産を、今度はわたしが若い人たちに少しでも多く与え、継承していくことが料理長としての使命だと思っています。

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