【20】御宿 浜辺屋 若女将 いしはら純子さん

どの産地のものでも手に入る便利な時代だからこそ、
鳥羽で食べたいと思ってくれることが一番


家族経営の宿を鳥羽の小浜で営んでいます。一時はスイミングのインストラクターをしていましたが、20歳で実家を継ぎ、料理人に。4部屋限定の宿で、お客さんと接する機会も多く、お客様の声や周りの意見を取り入れ、柔軟に対応しています。

祖父も父もこだわりの一本釣り漁師、実家を継いで調理場に入りました。母が接客係として女将をしていますので、わたしは板前。元々そのつもりでしたので、調理師学校に行きました。表に出ることは少ないですが、つくったものを食べてもらうので、お客さんとは近い距離にいますね。東海、関西エリアのお客さんがメインで、その多くがリピーターさんです。

この仕事しかしていないので、若いときは、職の選択肢がほかにもあるんじゃないのかなと、葛藤もありましたが、料理が好きになりました。父が漁師ですから、その魚を食べてもらいたいという気持ちが強いです。釣ってきたものを生け簀からお客様へ提供して、食材に困ることはありません。

鳥羽に旅行というと、どうしても伊勢エビやアワビなど高級魚介のイメージがあって、それを変えたくて、地魚だけのプランをつくりました。メジャーじゃないけどおいしい地魚を味わってもらってます、しかも安いですから、2度3度と来てくれます。今は、真鯛、ハマチ、タチウオ。それをもっとたくさんの人に知ってもらいたい。

鳥羽では普通に天然の鮮度のいいものがあります。でも外に出て暮らしたことがなく、それが当たり前に育ってきたので、恵まれた環境を強く感じるようになったのは、息子たちが外に出てから。鳥羽の魚が食べたい、鳥羽の海藻はおいしい、ワカメがいいと、言っています。

伊勢市のマルシェイベント「森の市」に、声を掛けてもらって出店したことがありますが、出せるものといったら、魚です。今が旬のおしゃれな店に混じって、それを売るのはためらわれたのですが、「サワラバーガー」は一時間で完売しました。バンズにワカメを練り込ませて、サワラはフライにしたフィッシュバーガーです。タチウオのミリン干しも透明なカップに入れて並べたら、意外と子どもたちに人気で。でもサワラもタチウオも、魚自体を知らない人がほとんど。認知度が低いなあと、改めて思いました。調理場を抜けられないので、あまり参加できませんが、鳥羽の魚を広げる、いいきっかけになりました。

便利な時代になって、どの産地のものでも手に入るようになったけど、鳥羽で食べたいと思ってくれることが一番で、それがリピーターにつながります。宿では、今ある、旬のものしか出せませんが、それに特化して考えていきます。自分も鳥羽で育ち、また鳥羽で子育てができて、子どもたちのソウルフードが鳥羽でよかったと思います。
カテゴリー: 女将

【19】鳥羽ビューホテル花真珠 女将 迫間 優子さん

地元の就職先として選択肢にいれてもらいたい
旅館で働きたいと思ってくれたら、うちじゃなくてもいいんです。


あこや会以外でも活動する優子女将。全旅連の女性部、労務委員会に所属し、副委員長として、生産性向上であったり、どうすれば人々が働きやすくなるかを考えています。また三重県の旅館組合青年部や伊勢商工会議所のビジネスパークでも、宿の地位向上を目指し、旅館業、サービス業、ときにはマーケティングについて、高校生や中学生に講義しています。

サービス業ですから人を避けていては仕事になりません。それはお客様に対しても、従業員同士でも同じです。人に接して、思いをめぐらし、声を掛け合う、助け合う、気付いてあげることが大切。一匹狼ではできない仕事ですね。

クレームの後のお褒めの言葉は、どん底からのギャップに救われます。落ち込んで、また喜んでの繰り返し。

高校生や中学生に講演をすることがあるのですが、辛いことは何ですか、という質問には、やはりクレームだと話しましたが、お客様からの「ありがとう」の一言に、いい仕事ができたなと、実感できる業務です。地元の就職先として選択肢にいれてもらいたい思いで、学校からの会社見学も受け入れています。そんなときは、ビューホテルだけでなくて旅館業全体の話をします。旅館で働きたいと思ってくれたら、うちじゃなくてもいいんです。

旅館業全体で盛り上げていかねばと痛感しています。一番は鳥羽が元気なこと。隣接する伊勢や志摩と同じではなく、鳥羽独自の売り方を考えないといけません。新たな商品づくりをしたり、大手旅行代理店などに側面からアピールしていますが、大きいイベントを行ったり、何かを誘致したり、大規模な戦略も必要だと感じます。これからは、「女将」然り、日本の旅館文化を世界に発信することが自分たちの務めだと考えています。海外の旅行会社との連携も深めながら、発信力を高めていきたいです。

学校や病院、買い物施設など、不足していると感じることも多く、若いお母さんにとっては住みにくい場所ではないでしょうか。もちろん風景や食材など、このままで充分な鳥羽の魅力もありますが、住む利点を増やして、ほっとできる町になればと思います。国際文化都市というなら、学校で語学に特化するとか、あえて思い切ったことをするのも一つでしょう。教育で突出するのか、観光で尖るのか、思い切ったことをして、日本一住みたい場所になるような、突出したものが欲しいですね。

まち全体的には鳥羽の現状に焦っていると思います。何かしら問題定義をして、形にしていかないと、と考えています。
カテゴリー: 女将
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