【21】KKR鳥羽いそぶえ荘 料理長 岡本和輝さん

料理の献立は山あり谷あり、
トータルの満足感に必要なのは引き算です


料理全国大会で伊勢志摩の食材を使い「郷土料理部門文部科学大臣賞」を受賞した岡本和輝さん。ご実家は国崎町で民宿を営み、釣り好き。鳥羽の海の幸をよく知っています。

実家は漁師をしながら民宿でした。そういう中で育って、なかば手伝いは強制的でしたから、料理の世界に入るのは、何の抵抗もなかったです。

最初は働き手が足りていないところへと転々としましたが、今のKKRが一番長く、平成5年に入社。普段の業務に加えて、料理展示会への出品が多く、若いときには、忙しいのになぜこうゆうことをするのか、意味があるのかと疑問に思ったことも。

展示会の料理は何もないところから一人でつくりあげるのですが、引き算ができるようになれとアドバイスをもらいました。昔は「10あれば10出すのがいい、それでお客さんも喜ぶ」と考えていましたが、料理の献立は山あり谷あり、途中で一品、ほっとする軽いものをいれると、食べる方は次が楽になり、トータルで満足感が出るのです。展示会へ参加することにより、普段の献立にメリハリがつくようになりました。しかし引き算は難しい、自信がないと引けません。毎回出すようにいわれて経験を積んでいたら、いつの間にかプラスになっていました。

グループ内で転勤があり、京都や大阪にも行かせてもらいました。非常にいい勉強になりましたが、デメリットは思うように食材が入らないこと。日曜は全ての魚屋が休みで予約注文のみ、伊勢エビ一匹が入らない。鳥羽のよさが分かりましたね、種類もすごく豊富。伊勢エビやアワビ、それに海藻、サワラもすぐに使えます。都会でサワラは刺身で食べません。鮮度保持が難しいんです。サワラはいま、鳥羽市も売り出しているし、できるだけ使おうと思っていますが、料理は県民性にもよりますしね。大阪では高級魚として刺身や吸い物で食べられるホウボウなんかは、鳥羽でも捕れているんです。でもこの辺にホウボウを食べにくる人はいないし、値段が付かないから市場で競りにもかけられていない。そんな未利用魚が何とかならないかなと思います。実家が漁師もしてましたし、釣りにも行きますから、この時期に何が捕れるか、だいたいはわかるんです。未利用魚が食べてもらえるようになれば、鳥羽の料理や旅行に幅が出てくるかもしれませんね。又、海女も高齢化しているので、海藻を上手につかってあげれば、生活も少し楽になるのかなと思ったり。朝は海藻の七草がゆを出していますが、それ目当てに来てくれてるお客さんもいるんです。

味覚にも波があります。昔に比べるとちょっと味付けは濃くなってますね。世の流れに合わせつつも、自己満足にならないよう、自分の料理を出しつつ精進していきます。


カテゴリー: 板前

【18】鳥羽ビューホテル花真珠 料理長 岩城和也さん

料理人に必要なのは、第六感の発想力
見た目の楽しさや驚きも
提供できるように心がけております


平成28年より鳥羽ビューホテル花真珠の料理長に就任した岩城さんは、現代の名工・黄綬褒章を受章した松浦貞勝さんのもとで働き、跡継ぎとなりました。平成21年日本調理師連合会会長賞、平成27年全国日本調理技能士会連合会会長賞、平成28年三重県知事より中堅優秀技能者の部で表彰状を受賞しています。

働きはじめた頃は、鳥羽坂手島の旅館に勤め、伊勢の調理師学校に通いました。4年経ち、親方の薦めで外の仕事を見てこないかと松阪の料亭へも行きました。その後、親方に呼ばれて鳥羽に帰ってからも、3つの宿を移動。昔はそうやって、人が足りないところに呼ばれ、親方について転々としましたが、どの場所も料理人として勉強になりました。

鳥羽料理研究三重三料会・松浦会長の盛付けや味、センスのある料理に憧れて、ずっとついてきました。仕事に対して一切妥協せず、その姿勢をずっと貫いてきた方です。当時はその厳しさに反抗心もありましたが、自分が料理長となった今、あのときの松浦さんの気持ちが、しみじみとわかってきました。見倣わないといけませんね。

一品ずつ提供する小料理屋と違って、旅館では会席として全ての料理のバランスを考えて、献立をつくります。調理場を離れたときであっても、例えば店先で器を見れば、そこに何を盛ろうかなど、四六時中、献立のことが頭から離れません。スーパーでも野菜や魚を見かけると、何につかおうかなと考えますね。市場にもたまに足を運びます。気象や環境の変化で旬がずれたりしますから、今ある食材を頭に入れておかねばいけませんし、鳥羽は食材そのものがブランド品です。伊勢エビ、アワビ、牡蠣、それに松阪牛も、お客様が求めるものに敏感にならないと。
調理場はわたし含めて6人です。10代~40代と若い世代ががんばっています。同じミスをすれば怒りますが、10分も経てば、もうそのことから頭を切り換えています。若い人のレベルアップは、自分のレベルアップにもつながりますし、若い人が育てば、励みにもなり、任せられるようになれば自分がほかのところに目を向けられます。

お客様には五感を感じながら食べていただきますが、料理人に必要なのは、もう一つに第六感。発想力です。一品ごとに素材を生かした料理のおいしさだけでなく、見た目の楽しさや驚きを提供できるように心がけております。これまで身に付けた基本や教えていただいた学びに、プラスして自身の色を出していきます。一緒のことをやっているようではダメですから。そして育ててくれた人の期待をいい意味で越えられるよう、努力しなくてはいけません。
カテゴリー: 板前
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。