差別化していかねばなりません
宿としては、優子女将で3代目。祖父が鳥羽のまちなかで料理旅館を開業し、昭和55年に「鳥羽ビューホテル」を安楽島に建設。優子さんが生まれる一年前のことです。そして平成3年に「花真珠館」を拡張し、現在の形態となりました。
小さい頃は、フロント業務で母が寝泊まりすることもあり、妹と3人で旅館で過ごす時間も多かったです。皿洗いや布団敷きを手伝ったり、売店で売り子をやったり、小さいときから旅館に馴染んで暮らしていました。ですので宿を継ぐことに疑問も抱かず、自然ななりゆきでした。学校を卒業し、旅行会社と旅館を繋ぐ案内所に勤務し、四国の金比羅山の麓、琴平紅梅亭でも修行させてもらいました。接客も料理も洗練されていて、若い人が働く職場でしたので、帰って来たときは現状とのカルチャーショックがありましたね。1、2年は葛藤でした。
自分の宿に入ってからの10年は、旅行業界も旅館の形態もすさまじいスピード大きく変わってきました。観光地にもビジネスホテルが建ち、泊食分離も聞かれます。だからこそ、旅館は特殊。1泊2食を出す価値のある宿として、努力、工夫を重ね、差別化していかないといけません。
旅館のよさを挙げるなら、畳の部屋で寛げること、料理も出してもらえる、安心して遊べる空間があるのも一つです。小さい子がいる旅行者にとってはありがたい施設ですし、お客様にはゼロ歳から3歳までの子を連れたご家族が多いです。生後数か月のお子さんを連れて、若い夫婦が来てくれることも。旅行に出る感覚も、昔と今では違います。
最近では旅先でのリラックスの方法を提案しています。本物の音楽を聴いてもらいたいと、夏休みには夕食前にロビーでオペラ歌手、それにバイオリンとピアノの生演奏でコンサートを行いました。元はと言えば自分の子どもに聞かせたいという気持ちから始まったことなんです。自分が旅行に行くときにも、どんな体験プログラムがあるのか調べて行きます。
お子様に特化した取り組みとしては、料理長に協力してもらい「世界一のお子様ランチ」を提供しています。松阪牛のハンバーグやミートソース、伊勢エビのエビフライ、新鮮な地の魚など、本物の味を。ビューホテルで一泊して、ちょっとプラスになってもらう、がコンセプトです。まわりを気にせず食べてもらえたらと、子どもとお母さんだけの食事プランも考えています。鳥羽の宿ならではのターゲットを絞り、年配の方や、3世代旅行を狙った旅行商品も考えています。