【14】戸田家 女将 寺田まりさん

働くとは、社会でどう対応できるか
宿で言えばコミュニケーション力です


188年の歴史の中で、時代に合わせて柔軟に対応してきた老舗旅館・戸田家。いつの時代も大切なのは、おもてなしの気持ちと、その気持ちを表す礼儀作法、立ち居振る舞いにあります。

結婚して鳥羽に来て20年になり、宿に出はじめたのは18年前です。お木曳き行事や式年遷宮の賑わいを経験しましたが、夜の宴会で挨拶し、朝食のあとお客様がお出掛けされ、そうこうしていると昼食の団体様の受け入れ。めまぐるしい毎日で、どうやって業務をまわしていたのか、今となっては不思議なくらいです。大きい旅館を受け継いだのだと実感し、大変さが身に染みました。ちょうど主人が東京営業所に行ったときでしたので、家庭のことも一人でこなしていました。塾の送り迎えのとき、宿を出て駅で子どもを迎えるのを忘れて、家に帰ってしまったなんてことも。

日々の運営は各部署の支配人と情報交換し、客室係をまわしていくのが一番の役目です。今はインターンシップなどで、台湾やタイなど外国からの派遣社員も多くなってきて、中国の実習生も受け入れています。11ヵ月という期間ですが、ご縁があって来てもらったのですから、戸田家の一員として指導しています。

日本文化を知らないだけでなく、足下の障害物をまたがない、足で物を除けないなど、基本動作もさることながら、どうして駄目なのかという理由を伝え、きちんと理解してもらいながら、一つひとつ習得してもらっています。何気ない普段のしきたりも、お客様のサービスに関わってきます。例えば、ご飯のよそい方など、一回で盛るのは駄目、お米をつぶしては駄目と、実際に身振りを交えて教えています。日本地図を知るのも一つですね、遠方から来られたお客様には、その方に相応しい挨拶をしないといけません。「遠いところありがとうございます」の一言があれば、そこから会話が広がります。働くとは、社会でどう対応できるかということ。宿で言えばコミュニケーション力です。こういったことは、外国の人だけに限りません。

とにかく笑顔は絶対です。あとはせっかく「いらっしゃいませ」の気持ちがあっても、そこに立ち居振る舞いが伴ってこそ伝わるもの。礼儀作法は大切ですし、感覚の問題もあります。畳の縁に沿って、四角いお盆を置くなど、その行為が気持ちのいいものであるよう、心掛けています。
お客様から従業員をお誉めいただくと、本当にうれしいですね。ちゃんとやってくれているんだと安心しますし、自分たちの仕事が「感動を与えている」と、みんなに伝えています。


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