【12】鳥羽シーサイドホテル 調理部長 統括料理長 都地宏二さん

何日も前から仕込んで、料理は簡単にできない
それでも食するのは、ほんの一瞬
それをいかに真剣に取り組むかどうか


鳥羽シーサイドホテルは3つの館があり、厨房では和食・洋食合わせて46人が働く大所帯。味覚だけでなく調理する音や香りなど五感で楽しませてくれるバイキングや、和洋折衷の会席料理など、多彩な料理を取り仕切るのが統括料理長を務める都地宏二さん。鳥羽生まれの鳥羽育ちで、共働きの両親のもと、小さい頃から台所に立っていたそうです。

料理は目で食べるとも言われています。見て美しく、食べておいしい色彩は、味覚さえ左右します。また日本料理では、春夏秋冬と四季を折り込んだ食材を使って演出します。わたしはきれいな料理をつくって、お客様に喜んでいただき、また驚いていただくことが好きですね。

ホテルは、いろいろなお客様にお越しいただきます。関西、関東、また外国から、そして甘口な人、辛口な人、また激辛を好む方もいて、それぞれ五味五感を持っています。みなさまに喜んでいただき、アンケート調査で高得点を取るのはなかなか難しいこと。まずは平均点で75点、100人宿泊されて70人ぐらいのお客様がおいしいと言っていただければ100点ではないでしょうか。しかし、より100点に近付けるよう、一生懸命努力することが大切だと思っております。

お客様の中には、料理の献立を見ていない方がたくさんいます。さまざまな食材を使って、一つの料理をつくり出すには、2、3日前から仕込みをし、とても時間が掛かり、簡単にできるものではありません。しかしお客様が食されるのは、ほんの一瞬。また、よそ見をして料理を口に入れている方、お酒の席ではすぐに食べられず冷めてしまったり、酔っていて味わうどころじゃなかったり、食べられないときもあります。それでも影穴からタイミングを見て、揚げたり、煮たり、蒸したり、切ったりと料理長として指示を出しています。

白鳥はとてもきれいで、優雅に泳いでいます。ですが、水面下では必死にこぎ続けて、自分を表現しています。勝手な持論ですが、わたしの職業は白鳥と同じ。水面下のような裏方ですが、どんなに辛くとも、真剣に料理に向き合い、いかに漕ぎ続けて、きれいで優雅な料理を見せられるかだと思っております。それが一瞬で終わってしまっても、真剣に取り組むことが、料理人の「粋」だと思っています。

統括料理長となったのは48歳でした。私自身出来が悪く、褒めていただいたことはあまりありませんでしたし、よく叱られました。でもくじけませんでしたね。「叱られる」ことは、技術を教えていただくこと。イコール「財産」です。料理人は技術が財産。その財産を諸先輩から譲り受けているようなものです。料理長といっても大変です。パワハラ、セクハラ、労務管理と、わたしの若いときにはこれらの言葉すら知りませんでした。若い人に指示を出したことが気になり、家の前まで帰っても、会社に戻ることも多々あります。諸先輩からいただいた技術という財産を、今度はわたしが若い人たちに少しでも多く与え、継承していくことが料理長としての使命だと思っています。

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カテゴリー: 板前